🫒オリの自由研究大学🫒
  • 🚀プラトン宇宙船
  • 🌟メタティーチング
  • 👁️新しい予言
  • ⚽哲学
  • 😀船長室
  • 🔫

美しい少年の存在論 II

11/24/2019

 
画像
とげを抜く少年の像(ドイツ)
美しい少年の存在論、第二弾です。さて、第一弾は、徹底的な男性優位の貴族的世界観を描写することで歴史上語られる美しい少年の存在論の説明を試みました。それで、今回の"美しい少年の存在論 II"では、よりこの課題の外側の骨格についてやって行こうと思います。今回は、文体を崩して気楽にやっていこう。

まず日本語で一般に流布されている、(男性同士の関係を前提とした)少年論の多くは筆者が女性です。だから、どうしても実態というよりは空想的な作品が増えてしまう。それらはアートであり、彼女たちが現実から抜け出たいという希求です。しかし、女性という立場からは、美しい少年論を論じることは難しいのです。なぜならば、少年と女性とは、男性と女性の間柄だからです。その関係は帰するところ、精神的なやり取りではなく肉体的なやり取りになってしまう。少年と女性という関係性は男性と女性ですから、性行為で満足して解消されてしまうのです。子供ができることもあるでしょう。つまり、身体的ないし社会的に結実してしまうがゆえに、高度に精神的な営みであるところの少年と男性の関係を内面から理解することは、ほとんどの女性にとって困難です。

少年と男性との間柄は、内面の話なのです。精神の優越を前提とした間柄なのです。ただし、だからといって全くのプラトニックなのかといえば、そうではないのだろうと経験からは思います。とはいえ、金色の巻き毛、硝子の両眼、陶器の肌という、単なる実存をのみテーマにできる話でもないでしょう。それがなければ始まらないが、それで終われる話でもないということです。美しい少年のオントロジーというものが自ずから多分に内面の課題であるがゆえに、少年と男性を繋ぐものもまた高度に精神的なものだったのでしょう。一方で、実存としての少年と男性の関係というのも、また事実であったのだろうと考えられます。こういうのは論ずるより実証することが手早いですから、下の彫刻をご覧ください。
画像
これは19世紀のイタリアで復元された"Boy with Thorn(とげを抜く少年)"です。オリジナルはヘレニズム時代(紀元前4から紀元前1世紀)に作られたと伝わります。とげを抜く少年はよく複製されたモチーフで、世界中の美術館で見つけることができます。ここで、あえて近現代の復元を例に持ってきたのにはわけがあります。古代の話を現代に返すことで、男性性にまつわる美意識がそう遠くないものであることを理解してもらうためです。

この彫刻は、実物の少年からすると距離のある描かれ方でしょう。ヨーロッパの少年とは、本当はもっと線は細いし、縦に長いものです。このような彫刻における少年の理想像の描かれ方は、ある種の故意の美性を強調します。ヨーロッパの少年のマネキンは多かれ少なかれ、このような筋肉質の彫刻に酷似しています。服飾のディスプレイに使われるものは、当然人々の理想像を反映する姿です。マネキンの女性ならばウエストの細さが誇張され、男性なら胸部に分厚く盛り上がった筋肉がのります。それらが魅力的とされるからです。では、少年のマネキンの場合、そこにあるものは子どもとしての少年ではなく、小さい大人としての少年であるように思われます。本来、子どもとしての少年のマネキンならば、親しみや無邪気さこそを売りものにしそうなものです。しかし、ヨーロッパの美的知性は、それがさも当然のことであったかのように美しいことをこそ望みます。美しくなければ、価値がないのです。ヨーロッパの人々は、美を知っているのです。

美しい少年像のかかる存在論とは、実存でありながら人々の意識の内側を伝っているのです。その内側を伝う美の本性とでもいうべきものが、美が何たるかを決定し志向させるのです。これは美しい少年のオントロジーを支持しうる一つの手がかりになるだろうと、僕は思います。



補足:"美しい少年"の社会的位置づけ
一般に、可愛い女の子の方が価値があると両性共に誤解しがちですが、これは社会的観点から言うと誤りなのです。容姿の良い女性というのは、女性に対する付加価値の話です。しかし、実際のところ、高い地位や職業の多くは男性によって占められています。この特権的なリーグへのアクセスを持つには、知性や容姿など社会的競争力のある資質を多く持っていることが望まれるはずです。そして、全体から評価を加えると、社会が付与しうる経済的に測定される基礎的な価値としては、少年と少女では少年の方が大きいということです。美しい少年と美しい少女では、その間の社会的価値に大きな隔たりがあるように思われます。なぜなら、我々の社会は無意識に男性の方に多くの社会的価値を認めるようにできているからです。

じゃあ、またね。



Reference:
Plato. "Meno"
Marcus Aurelius. "Meditations"
Gaius Petronius. "Satyrica"
Martin Heidegger. "Being and Time"
Simone de Beauvoir. "Memoirs of a Dutiful Daughter"
Michel Foucault. "The History of Sexuality"
Pierre Bourdieu. "Masculine Domination"
Maurice Ravel. "La Valse"

    カテゴリ

    すべて
    マスキュリズム
    少年の存在論
    知識
    予知

    RSSフィード

©2017-2023, OlLy's Vrije RESEARCH Universiteit.
ALL RIGHTS RESERVED
Privacy Policy
  • 🚀プラトン宇宙船
  • 🌟メタティーチング
  • 👁️新しい予言
  • ⚽哲学
  • 😀船長室
  • 🔫