AKG N5005とBeyerdynamic Xelentoをワイヤレスで比較しよう。N5005は付属のBluetoothケーブルにReference Soundフィルタ、Xelentoには Shure RMCE-BT2を装着した。こんな高級機をワイヤレスにしてまったく…と思う人もいるかと思うけれど、ワイヤレスには一度始めてしまうと戻れない快適さがあるんだ。
再生機器とテスト音源については長いので、末尾に書いてあるよ。 ■ドライバ N5005: 中高音域用にバランスド・アーマチュア型を4基、低音域用にダイナミック型の9.2mmを一基搭載している。有線時の広帯域再生は、バランスド・アーマチュアでカバーしているのだろうか。N40は、ドライバ構成的に低音域担当のダイナミック型が働いていたような気がするね。 Xelento: テスラドライバー(ダイナミック型)を一基搭載している。うーん、詳細は調べたけれどわからなかった。 ■全体的な使い勝手 N5005: 付属するワイヤレスケーブルは、スポーツタイプのケーブルだ。だから、後ろで長さを調整したり、動きやすいようにできる。ケーブル自体も軽量で、かなり扱いやすい。 Xelento: Shure RMCE-BT2はヘッドフォンアンプを奢っているために大きいので、服にクリップして使わないといけない。服の前に止めるようにデザインされていて、後ろ側には留めにくい。純正のワイヤレスケーブルも同様のクリップタイプなので、不便さは同じだろうと思う。首回り自由度が減るのは、意外に邪魔なんだ。 ■高・中・低音 N5005: ワイヤレスでも、透き通る高音域から、豊かな中音域、そしてどっしりした低音域までとてもバランスが良く繋がっている。有線時と比べると、低音域が減衰してしまうが、イヤーピース交換などで対応できる範囲だ。 Xelento: Shure BT2のアンプが優秀なためか、低音域から中音域の豊かさが特に優れている。高音域までしっかり伸びていき、有線時と比べて遜色がない。 ■各楽器や声の質感 N5005: 無線でも音の質感にそこまでの変化はない。非常に緻密でリアリズムの強い現代的描写を、ワイヤレスでも楽しむことができる。有線時は楽器を触る手が見えるが、無線で使うとその微細な描写は失われる。 Xelento: N5005と比べると音の角が丸いのが特徴だ。音の生っぽさという点では、Xelentoの方がN5005よりも優秀だと思う。つまり、解析的な音色ではなく、コンサートホールで聴くような残響のふちを伴った音色ということだ。 ■音の分離 分解能 N5005: 有線時と比べると、内臓のヘッドフォンアンプのためか、aptXのためか、どちらかはわからないが録音の些細なノイズのような細部のディテールは失われてしまう。もともと聴こえるべきではなかったところだから、消えたほうがかえっていいのかもしれない。 Xelento: 有線時とさほど変わらず、音を太く精彩に描き出す。Xelento自体が分離が非常にいいタイプのモデルではないので、N5005のような非常に解析的なサウンドを志向しているモデルとは別方向のものだと思った方がいい。つまり、セパレーションで選ぶなら、N5005の方が数段優秀だ。 ■サウンドステージ N5005: ワイヤレスでも音場の広大さには変化がない。N5005のライバルはヘッドフォンであって、イヤフォンではないと思う。 Xelento: N5005ほどではないが、充分な広さがある。ただし、価格帯を考えるともう少し頑張って欲しいような気もする。音が近いことで得られる濃密さというのもあるし、絶対的に悪いということではないと思う。 ■Bluetooth N5005: Bluetooth 4.1だが通信は安定している。aptXまでの対応だけれども、Xelento+BT2と比べたときのどことない情報量の不足感は、コーデックのせいなのか、それともヘッドフォンアンプのせいなのか、そのどちらなのかはわからない。 Xelento: Shure BT2はBluetooth 5.0でaptX HD対応だ。音量調節をする部分にアンテナが入っているらしく、ここを手で覆い隠すと通信が途切れたりする。大きさの割に通信の安定性は低く、外で使うならN5005と純正ケーブルの方が優秀だった。 ■遮音性 N5005: 遮音性に関しては、Xelentoより劣る。耳に密着する形状ではないし、ポートもあるので、外からの音は拾いやすい。 Xelento: 遮音性に関しては、N5005より一段優秀だ。Xelentoは、耳にとてもフィットする形状だからだろう。その遮音性の高さが低音の量感を増やしている。 ■まとめ オーケストラや複雑に入り組んだ凝った構成の音楽をワイヤレスで聴くならN5005、それ以外の場合ならXelento + Shure BT2もいいんじゃないかなと思う。価格帯は近いものの、音色がターゲットとしている層がかなり異なるから、聴き比べる方がいいね。 個別レビュー AKG N5005 レビュー Beyerdynamic Xelento Remote レビュー
再生機器・環境
SONY ZX300 & WM1A & NW-A50 テスト音源 *FLAC 44.1khz 16bit Misfits, Hakuna Matata, Thousand Knives, Shining Boy & Little Randy, Messiah: For unto us a child is born, Bach Christmas Oratorio BWV248, Brahms Intermezzo Op 118 No 2 *FLAC 44.1khz~192khz 24bit (High-resolution audio) Death with Dignity, Atlas song, Bad Romance, Trigger Bang, Unbreakable, Ballet Mecanique, La Valse |