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"君は囚われている…"

"…君が作る秩序に"

[精霊文学]

王子研究詩篇群

12/16/2019

 
画像

敬愛する王子へ
一日も早い本復を
心よりお祈り申し上げます

貴方の最大の友オリバー


カミヒコーキ(機械飛行)
君についた嘘が
折れて飛ばなくなってしまった紙ひこうきのように
見つからないまま 打ち捨てられている
 
新しく作っても
ただ折れることの繰り返しでしかないのなら
僕の手の中で 握りつぶしてしまおうか
 
まだ口にしない君の名前を聞くと不安になる
空に投げれば見境ない風がどこかへ追いやってしまうから
君に会う前から君のことを愛した
破れてしまう翼を繕うことを覚えるより先に
 
君を愛した誰かがいたと信じたくなどない
 
名前を撫でると止まっていた僕の時間が動きだし
もういちど空を飛べるような気がしてくる
君と会う前から君が恋しかった
折れて二度と飛ばない僕の紙ひこうき
 
夢でなくて
大空をもう一度自由に飛ぶことが出来たのなら
君を愛した誰かがいたと信じたくなどない




キカイヒコウ(紙飛行機)
機械で巻いた言葉を君はずっと聴いていた
彼を愛した君がいて
髪の色の匂いが何色で
その匂いがどんな形をしていたのか
投げかけた声は空に消え
終わりはいつ始まったのか
 
どれほどの時間を機械を巻いて過ごすだろう
ぜんまいにどれだけの愛が募るだろう
 
もう思い出せるものがなくなっても
また機械で巻いた言葉は流れ続ける
ぜんまいはとっくにきれていても
君の思い出を繰り返すために
君が生きていた時を取り戻したいと
機械の流すただ許された思慕のひとつ
君が生きていたころの自分をもう一度
壊れてしまう前の自分をもう一度
君がぜんまいを切る前の




きみが星になるころ I
好きな色を使っていいぞと言われたから
好きな色を使うことにした
たとえばわからないけれども
あなたが好きであるような色だ
 
好きな紙を使っていいぞと言われたから
床に描くことにした
紙と床は同じものに思えたから
自由にやるようにした
 
人の行き交うのを見ていると
同じ音がしてくる
それは誰もいないけれど誰もがいる
低くにごった音がする
 
ここはとてもいい場所だったから
なるべくはやく離れようと思った
それは魔法の効き目がいいうちに
眠りにつくのとまったく同じだ
 
きみは息ができないほどに
折り重なっている
やがて何もわからなくなるだろう
きみは銀色の息を吐くことはない
 
クレヨンで手が汚れたけれど
満足感はどこにもなかった
描きたいと思う気持ちとやめたいと思う気持ちとが
違う二人が同じことで争うことをやめない
ぼくは鉛筆を持とうとおもった
もしくは何も持たなかった
すべては造られるとき、すっかり失われてしまうから





きみが星になるころ II
きみが星になるころ ぼくはこう呟くだろう
どこまでのぼってしまったんだい
そこからの見晴らしはいいかい
そこはすっかり快適かい
 
きみはきっとこう答えただろう
あのね すっかり何も見えないよ
もうずいぶん遠くまで来たのだから
何もかもが見えなくなってしまったよ
 
きみが星になるころ ぼくはこう尋ねたいだろう
きみはきみのなりたいものになれたのかい
ひとの見る夢の色は ほんとうに色とりどりだったのかって
 
きみは黙って思うのだろう
それはなにかに編み込むこともなかったし
編み込まれたなにかを読もうとしたわけではないし
ひかりの匂いをかごうとおもったらここまできたんだ
 
ときどききみはぼくを裏切ってこういうのだ
それは慕わしくて すっかり離れ離れになったように
こんなに見晴らしがいいところにいないってのは
自分で自分を馬鹿にしているのとかわらないよ
 
みんなきみのことが好きだから
きみのいっていることは ぜんぶ正しいよ
最後にどうしてしまえたのだろう
きみを始めてさえいなかったというのに




とおいとおくへ
きみをおくった とおいとおくへ
ぼくがきづかないほどに とおくて
たまごのからが おちてわれても
きっととおくて ひびかないだろう

きみからはきこえるかい こうこえば
きみのなりたかったものを ぜんぶもってるよ
 
きみをおくった とおいとおくへ
きいてほしいことがあったんだ
はしっていって とどけたいけど
きっととおくて とどかないだろう
 
きみからはきこえるかい こうこえば
きみのなりたかったものを ぜんぶもってるよ
 
きみをおくった とおいとおくへ
ほどきかたをわすれてしまったよ
きってしまえば ぼくらのことは
きっとむかしに おきざりだろう
 
ふれたくても はいさえのこさない
きみのような したわしいひとは
わからないだろう ぼくのことなんて
どうしてきってしまえただろう
たちのぼったけむりのゆくえを
ちゅういぶかく ぼくはさがしつづけても
きみはいちべつもくれないのだから
 
きみからはきこえるかい こうこえば
きみのなりたかったものを ぜんぶもってるよ

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