1832年アントウェルペン包囲戦で母親を亡くしたフェリクスは、孤児になり方々を放浪します。幸いフェリクスは特別な少年だったので、どこで生き延びるのにも不自由はしませんでした。しかし、孤独に疲れ果ていました。あるとき喉の渇きを癒そうと、泉をのぞき込むとそこにはあの時無残に殺され吊るされて死んでしまったはずの、ヒューゴの姿が映っていました。ヒューゴは、小さい頃の友達でした。 ヒューゴの影を映した泉は、彼にこう伝えました。 「君はきっと僕の影になる、あるいは、僕が君の影になろう。」 ドッペルゲンガーの兄弟を得たフェリクスは、父の死をきっかけにヨーロッパを離れ、イギリス人に交じりアメリカへと渡ります。しかし、彼の祖国への強いあこがれは、終生消えることはありませんでした。そして、再びヨーロッパの大地を踏むとき、フェリクスとヒューゴは行く道を別にするのでした。 融合する意識を成型して 二人の距離の間を見積もる あるだけの希求を込め 弾丸を撃ち尽くした銃身が空を覗いた 絶対の善など 絶対の悪など 何一つとして確かなものはなかった それでも、この痛みを踏み越えた先にあった あの目がけた自由へ向けて行こう だけど帰りたいと願うだろう もう戻れないところまで来てしまった、と 家畜の深海魚 |